週刊医学界新聞 2886号 2010.07.05
転機が訪れたのは渡米して6年ほど経った後,
ミシガン大学にて老年医学を学んだときだった。それまで高齢者を部分的,断片的にしか診ていなかった自分が,包括的に評価することによって高齢者の虚弱化をもたらす多くの原因を明らかにし,複雑に絡みついた糸(問題点)を解きほぐすことに快感を覚えるようになった。それまで「診察は煩雑だし,どうせよくならないし」と高齢者の診療に興味を持てなかった自分が,虚弱高齢者の限られた余命での虚弱度やQOLの改善に情熱を傾けるようになった(一方で困っていることは,若年者の診療が少々退屈に思えるようになったことである)。