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4 給付と負担のバランス (給付と負担の見直し) ○ 現在65歳以上の介護保険料は一人当たり平均月4,160円であるが、これは保険料上昇を抑制するための特例交付金や市町村準備基金の取崩によって約400円程度抑制された結果であり、さらに介護職員処遇改善交付金や16万床の緊急基盤整備の効果、高齢化に伴う給付費の増加を踏まえると、平成24年度には5,000円を超えることが見込まれている。 保険料負担は月5,000円が限界との意見もあり、今回、給付の適正化や、利用者の負担の見直しに取り組むことなく、保険料が5,000円を超えてしまうことは、制度への信頼の上で望ましくない。 そのため、サービスの提供に伴う必要な負担については被保険者に求めざるを得ないとしても、次期介護保険事業計画が始まる平成24年度において、介護保険料の伸びをできる限り抑制するよう配慮することも必要である。 ○ 将来にわたって安定的に制度を運営し、また、高齢者の暮らしを支えるために必要な給付の拡充をする際には、平成22年6月22日に閣議決定された「財政運営戦略」に記されたペイアズユーゴー(pay as you go)原則に則って、必要な負担増に見合った財源を確保することが求められる。 ※「ペイアズユーゴー原則」とは、歳出増又は歳入減を伴う施策の新たな導入・拡充を行う際は、原則として、恒久的な財源を確保するものとする考え方。 ○ このように、今後も給付の充実やそれに伴う保険料の上昇が見込まれることに加えて、とりわけ、第5期介護保険事業計画期間に向け、介護職員の処遇改善の継続と地域包拢ケアシステムの確立等のための給付の充実等を図る要請に応えるためには、介護保険制度の中で、給付の効率化・重点化及び財源の確保を進めていくことが必要である。その際、今後とも給付の増加に対応した更なる負担を、制度を支えるそれぞれの方にお願いせざるを得ない以上、より公平、公正な負担制度の下で、第1号被保険者、第2号被保険者それぞれが応分の負担を行っていくことが必要である。 (総報酬割) ○ 現在の40~64歳が負担する第2号保険料は、その加入する医療保険の加入者数に応じて負担金が決められている。このため、総所得の高い医療保険者は低い保険者と比較して、総所得に対する介護保険料の割合が低率となっている。 ○ 介護保険制度において、被用者保険の第2号被保険者の保険料について、被用者保険間の負担の公平性を図る観点から総報酬割を導入する必要があるとの意見があった。 また、現在の介護報酬における地域係数は、都市部の介護従事者の賃金水準を反映していないという意見もあり、比較的所得の高い都市部の第2号被保険者に負担能力に応じた保険料負担を求めることにより、地域係数を見直し、都市部の介護従事者の賃金引き上げに充当することが必要であるとの意見があった。 一方で、総報酬割の導入については、従来の保険料負担の仕組みのルールを変更するものであり、慎重な対応を求める意見があった。 (財政安定化基金) ○ 都道府県に設置されている財政安定化基金については、その基金の取り崩しが可能となる見直しを行うよう会計検査院から平成20年に指摘されている。制度創設当初においては、介護給付費の推移を予測することが困難であったが、昨今給付費の推移が安定していることを踏まえ、必要な額を確保した上で、基金の取り崩しを行い、保険料の軽減に活用できるよう法的整備を検討する必要がある。 (公費負担のあり方) ○ 介護保険制度は、その半分を保険料により賄い、給付と負担の関係が明確な社会保険方式を採用してきた。介護保険料収入はこの10年間で約120%上昇しており、これは住民が地域の介護サービスの拡大のために給付に相応する保険料を負担することを選択してきた結果である。 ○ 今回の部会の議論においては、今後の保険料の上昇を懸念して、公費負担割合を増加させるべきであるとの意見や調整交付金を国庫負担25%と別のものとして外枠化すべきとの意見があった。 ○ しかし、一方では、 ・ 公費負担割合が増えれば増えるほど、財政事情の影響を制度が受けやすくなり、住民の納得の下で、必要なサービスを整備し、またそれに見合った負担を行うという社会保険制度の利点を失うのではないか、 ・ 公費負担を引き上げることで一時的に保険料の上昇を抑制できても、今後要介護者のさらなる増加等によって給付が増加すれば、やはり保険料の上昇は避けることはできないので根本的な問題の解決にならないのではないか、 との意見もあった。 ○ 今回の改正においては、安定した財源が確保されない以上、公費負担割合を見直すことは困難であるが、今後、公費負担のあり方を議論するに当たっては、こうした社会保険方式によるメリットや被保険者の負担能力といった点を考慮して検討を行うべきである。さらに、 ・ 単に公費負担割合を増加させるべきなのか、低所得者への負担軽減策として活用すべきなのか、さらに、保険給付の範囲を限定した上で福祉施策として公費によるサービスを拡充すべきか ・ より一層地方が主体的に介護保険制度を運営するために、その権限と財政負担の分担をどのように考えるのか といった視点からも議論を行うべきである。いずれにしても、こうした議論は単に介護保険制度にとどまらず、社会保障と財政のあり方全体の中でも議論していくべき課題である。 (給付の見直し) ○ 給付の見直しについては、すでに述べたとおり、居宅介護支援・介護予防支援(ケアプランの作成等)への利用者負担の導入を検討すべきである。 ○ 医療保険においては、現役並み所得の高齢者については利用者負担が3割となっている。介護保険制度においても、限られた財源の中で、高齢者の負担能力を勘案し、所得に応じた負担を求めることが適当であり、一定以上の所得がある者については利用者負担を2割とすることを検討すべきである。 ○ 補足給付については後述するが、入居前に同居していた家族の負担能力等を勘案することや、多床室における居住費の見直しを検討すべきである。 (被保険者範囲) ○ 被保険者範囲については、今後被保険者の保険料負担が重くなる中で、被保険者年齢を引き下げ、一人当たり保険料の負担を軽減すべきではないかとの意見があった。 一方で、被保険者範囲の拡大は、若年者の理解を得ることが困難であり、慎重な検討が必要との意見もあった。 被保険者範囲のあり方については、これまでも介護保険制度の骨栺を維持した上で被保険者の年齢を引き下げる方法と若年障害者に対する給付も統合して行う方法について検討が行われてきたところである。 現在、障害者施策については、内閣府の「障がい者制度改革推進本部」において、議論が行われているところであり、今後は、介護保険制度の骨栺を維持した上で、被保険者年齢を引き下げることについて、十分な議論を行い結論を得るべきである。
by jpflege
| 2010-11-21 14:23
| 997 2012改正
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