人気ブログランキング | 話題のタグを見る
<< P 6040 ニュージーランド... P 6038 モスクワの大気汚染 >>

P 6039 田中 秀明 (一橋大学)

世代間問題研究所 DP 2010-7

83頁

税・社会保険料の負担と社会保障給付の構造
-税制と社会保障制度の一体改革に向けて-
2010 年7 月
田 中 秀 明

要 旨
少子高齢化が急速に進む中で社会保障の負担と給付の不均衡が拡大しており、税制と社会
保障制度の一体改革が喫緊の政策課題となっている。しかしながら、その関心の中心は消費
税の増税であり、直接税や社会保険料についての検討は十分に行われているわけではない。

本稿の目的は、所得税・住民税・消費税及び年金・医療・介護・雇用の社会保険料の負担と
社会保障給付(現金・現物)の実態と構造を分析することである。

税・保険料負担の問題は、それぞればらばらに制度設計がなされており、整合性がないことである。
税と社会保険料の負担の構造はその種類毎に大きく異なることから、1990 年代半ば以降2000 年代半ばにかけて所得が減少するなかで、所得の種類や雇用状況、所得の水準、年齢、保険の加入状況などの属性や条件により、負担率に大きな不平等や不合理が存在し、またそれが部分的に拡大している。

税・保険料の合計負担は所得水準に対して累進的ではあるものの、それは総所得比
20%前後の定率負担に近いものである。社会保険料が定率負担ではなく、逆進性が強いこと
から、直接税の累進性が相殺されるからである。

消費税の負担は直接税と併せれば、100 万円(等価世帯所得)前後を除き、累進的である。
年金・医療等の社会保険制度には、相当の一般財源が投入され、負担と給付のリンクが曖昧になっているが、それは、低所得の無保険者も負担の一部を担っていることを意味する。

今後税制と社会保障制度の一体改革を検討するためには、実態の分析が不可欠であり、加えて、改革の優先順位が重要である。

それは、直接税・社会保険料・両者の徴収面での一元化、保険制度の再設計、そして消費税・資産課税という順番である。

キー・ワード:税、社会保険料、年金、負担率、累進性、逆進性、可処分所得、再分配所得
by jpflege | 2010-07-29 10:37 | 029 Social P.
<< P 6040 ニュージーランド... P 6038 モスクワの大気汚染 >>