第162号 2008
本稿の目的は、高齢化によるニーズの高まりと、財源確保の課題に直面している近年のオランダの地域福祉改革について、「統合ケア」の視点から現状の改革の特徴と課題を明らかにし、わが国の政策の参考にすべき点を見出すことである。
これまでオランダの福祉改革は、「代替策」の方針に沿ってもっぱら専門職によるフォーマルなサービス提供体制のなかで、施設から在宅サービスへの転換がはかられてきた。近年では、さらに家族などのインフォーマルな介護の担い手を巻き込んだ「統合ケア体制」がめざされている。
しかしその具体策をみると、「利用者本位」のサービス体制が強調されるいっぽうで、医療と介護を切り離すような長期医療保険制度の改正や、市場原理の導入によるサービス提供体制の変容、また、高齢者や女性の就労促進策と家族介護への期待などがみとめられ、「統合ケア」を進めるうえで新たなディレンマを生み出している。